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今夜の番組チェック

小型船舶免許教室

■ボート免許制度がコロコロ変わりました。
船舶職員法が改正され、小型船舶の免許制度が大きく変わりました。もう、わけがわからんようになりました。

     一番下に免許教室の一日があります・・・・・

小型船舶教習艇    小型船教習艇

 

昔の実技試験は概ねこんなことをしてました。

           絶対遅刻しないように!服装は運動靴に長袖の服。

          乗船する時は舷側に足をかけないで低い姿勢で安定良く乗ります。

 

       最初は点検です。3人(順番が最後の時は2人もある)一組で受験します。

       船体、機関、安全備品のどれかが指示されますので、指差し確認しながら

       大きな声で発声しましょう。最初が肝心。

 

        運転席に座ったらハンドルの確認をしましょう。ハンドルは左右に一回転半しか

        回りません。左に一杯回し、右手でハンドルの一番上を持ち、そのままの位置

      をキープしながら右に一回転と少し戻します。そして時計の1時の位置に来た時

      舵は中央になっています。操船中にハンドル位置がわからなくなったら、こうして

      舵を中央に戻しましょう。エンジン始動は必ず換気をしてから!忘れると確実に

      減点です。この時各メーターの名前や意味を質問されます。

       ハンドル操作は右手だけ、左手はスロットルレバーから離さない。

         変針は45度90度180度が指示されます。「右45度変針しなさい」と言われ

       たら「右45度変針。右後方よし」終わったら「変針完了」と告げましょう。ハンドル

       操作は1時から7時まで、急激な操作はしないでやさしく扱いましょう。

          蛇行は最初にブイの延長線上の目標を確認しておき、蛇行が終わったら

        その目標に向かって走ります。速度は3000回転をキープ。ブイとブイの間隔

       は50メートルです。ブイとブイの真中に来た時がハンドルを反対にきるポイント。                    

         蛇行が終わっても油断大敵。試験官はいつの間にか後ろの受験生に旗を

       投げ込むように指示しています。そして「右舷落水」となります。受験者は

       「右舷落水、エンジン中立、右転舵」と発声します。

  

         浮いている旗を見て「落水者確認、救命浮輪投下。風下(川下)から救助に向かいます」

         と言って、一旦風下に行き、転回して旗に向かって低速で進みます。低速

         は概ね1500回転です。旗から15メートルくらい手前で後ろの人に「救助

         用意」と声をかけ、5メートル手前で「機関停止」。実際にはエンジンは止め

         ません。声だけです。後ろの人が旗を拾ってくれたら「救助完了」です。

         着岸は30度の角度で1500回転で近づきます「着岸します。着岸点よし

         着岸用意」と発声。15メートル手前でエンジン中立。5メートル手前で転舵。

         岸から1,5メートルくらい離れて岸に平行にすればよく、実際に着岸する

         必要はありません。

           離岸は前進と後進があります。後進離岸(右舷着岸から)の場合、

         ハンドル操作は1時から左9時に回し、そのままゆっくり後進に入れます。

           速度は微速。絶対に回転を上げてはいけません。

           前進離岸も一緒。1時から9時まで回し、そのまま発進。船尾が右に

          寄って岸に当たらないように、すぐ右に、やはり9時まで切って船がまっすぐ

          になったらまた左にきります。2〜3回繰り返し、岸壁から約30メートル離れ

          たら、ハンドル中央、エンジン中立にして「離岸完了」と言いましょう。

       実技試験でもっとも重要なものは口頭試問です。操船よりも重要と言われています。

      どんな質問をされてもいいように、しっかり勉強しましょう。

                          ★
「分かった。もう、何も心配しなくていい。私の目の黒いうちは面倒見てやろう」
 こんな言葉を言ってみたいが、言ってもらったのは私だった。仕事に行き詰まり、辞表を胸に悩んでいた時にふと訪れた教習所。個人でボート免許教室を経営していた老師がそう言ってくれた。
 10年以上も前の一生徒であった私に、いとも簡単に一筋の光明を投げかけてくれ、さらに

「一生懸命仕事をするのは良いことだが、仕事に執着してすべてを依存してしまうと、それを無くした時には自殺まで考えなければならなくなる。酒、金、女。なんでもそう。執着すると醜くなるし、失敗したときの被害も大きくなる。世の中には、そんなに執着しなければならないものは何も無い。」

 と付け加えられた。さすがに神風特別攻撃隊の生き残り、人生を達観している。なにしろこの老師の運転歴、生まれて初めてのエンジン付きの乗り物は飛行機、次が船で、車の免許は60歳になってからという。

 こうして、思いがけなく小型船舶免許講師としての勉強が始まった。
 この教室は4級免許だけを教え、国家試験を受験させる方式だが、場所も良く、当時はけっこう繁盛している様子だった。

 今は亡き、横山やすし氏もここの卒業生で、この教習所に船をおいて、南に呑みに行っていたという。

 小型船舶操縦士免許の取得方法は大きく分けて三つ。一つ目は、時間と金はあるが勉強で苦労するのは嫌だという人、または加齢のため、記憶力に自信の無い人、若しくは運動神経が人並み以下で短時間の訓練では国家試験合格レベルに達することが難しい人。このような人には日本船舶職員養成協会主催の講習を受ける方法をお勧めする。これは国家試験を受ける必要は無い。

 もう一つは、全国各地にある教習所で練習し、国家試験を受験する方法で、早く、安く取得出来る。ただし何回も試験に落ちるようだと、実技試験の受験料は安くないので、無試験コースの方がかえって安くなることになる。

 国家試験受験コースの教習所といっても色々ある。日本小型船舶海技協会に所属している教室や、安全普及会系の教室。そして、どこの組織にも属さない一匹狼型の教室。

 どこでも似たようなものだが、やはりこの世界でも情報力がものを言う。組織力をもって国家試験の傾向を把握しているかどうか、教習内容の向上にいかに努力しているかで、合格率に差が出るのは事実だ。

 老師の教室は、日本小型船舶海技協会に所属していたが、年1回は必ずインストラクターの講習会に参加して、講習能力のスキルアップを図るとともに、救急法等の実技講習も受ける。講習は二日間。朝から晩までみっちりやり、最後には試験もある。これに合格しないとインストラクターとしての認定はもちろん決して安くは無い講習費も返ってこない。

 講師修行の第一歩は、老師の学科講習がある度に何度も聞きに行き、ロープワークを横から眺め、実技講習に同乗する日が続く。今まで船関係の仕事をしていたわけではないから殆ど忘れている。
 生徒から質問されても困らない程度の知識は必要だから、改めて教科書を開くが受験勉強程度ではおぼつかない。船舶概要、航海、機関、気象、法規・・・これらの基本に加え、出題傾向の分析も大切で、学科だけでなく実技試験を受けてきた生徒からの情報収集も欠かせないし、試験会場まで行って様子を探り、情報収集するということも怠らなかった。試験官から言わせれば       

「このようなスパイ行為は気に入らない。中には実技試験の様子を知る目的で実際に受験する者もいるが、これだけは絶対止めてくれ」      

とのことだったが、受験指導する身には、こういったやり方は直接探れるから役に立つ。百聞は一見にしかず、一度試験を受けてみたら、受講者により具体的に教えてあげられるのにと思う。なにしろ自分自身が受験したのは一昔前、記憶が定かでないし、試験場所も変更されていて大川から神崎川になっている。海とは違って川には川の操船要領がある。川と言っても海に近いから干満の差があり、大阪市内の真中でも大きい時は2メートル近くの満ち引きがある。これが海以上に厄介で急な流れが発生する。もたもたしているとすぐに流されてしまうし流れが速い時は本職の水上警察署員ですら変死体の取込に失敗することがある。

 また、川幅が狭いので慣れない受験生にとっては転回する時など堤防に近づきすぎるような錯覚を起こし、その結果ハンドル操作が急激になる。反面少々天候が悪くても、海のように風波の影響をモロに受けることは無い。

ある実技講習日。ついにその日は来た。

「今日は用事があるから、一回やってみなさい、もう出来るやろ」 と老師の突然の言葉。
「わかりました」
と答えたが、急に緊張が高まる。今日の受講生は3人。中年男性と20代の男性、それに若い女性が一人という組み合わせだ。3人とも実技講習の数日前に学科試験には合格している。
 うまく出来るだろうかと心配になる。あれこれ考えているうちに受講生達は到着してしまった。そして老師は          
「それでは、先生。お願いします」    

と言って、本当にどこかへ出かけてしまった。

いい度胸である。500万円の教習艇と3人の命を預けていってしまった。これは何があっても一人で解決せよ。という厳しい試練でもある。

 過去においては、先生というのは常に自分以外の人のことであって、自分がそう呼ばれるのは何となく気恥ずかしく、しっくりこない。本当に先生と呼ばれるためには、この3人を合格できるところまで仕込まなくてはならない。

「おはようございます。それでは講習を始めます」                 
心なしか声が震えている。足が地に付いていない気がする。もっともこの教室は水上に浮かんでいるから足は地に着かない。

まずは学科の復習、口頭試問対策からだ。

「海上交通安全法の適用海域を言って下さい。」
『・・・・・・』
「航路を横断する時は、どのように操船しますか」
『・・・・・』
「え〜それでは、右の方から同じ型の動力船が来ました。このままでは衝突の恐れがあります。どうしますか」
『・・・・・』

 おいおい、冗談じゃない。これで本当に学科試験に合格してきたのか、何も答えられないではないか。仕方なく、一から口頭試問に出そうな問題を復習し、答え方も実際に声を出させて何回もやり直す。今日は学科講習ではないはずなのに・・・。
 勉強しなくても合格すると本気で思っている人がいる。最低限の勉強はしなくてはならないと言っても、のれんに腕押し、ぬかに釘、馬の耳に念仏、蛙の面にションベンというやつで、いくら言っても、やらない。ところが、それでも合格したりする人がいるから不思議だ。

今までに一人だけ、教習ビデオを見ただけで何の練習もせず、国家試験に合格した人がいたが、講習する側としては、そんなバクチを打たせるわけにはいかないのでよく出る問題を繰り返し、耳にタコが出来るくらいに吹き込む。試験の時に一つでも思い出して答えられれば儲けである。実技試験では、操縦そのものより、口頭試問に重点がおかれている。いかに上手く運転しても口頭試問に答えられなければ落とされる。反対に口頭試問に確実に答えていれば操縦に少々ミスがあっても合格している。

 講習する度に受講生から聞かれることがある。

 「一発で合格する確立はどの位ですか」  

という質問が毎回判で押したように出る。

パレトの法則というのがある。アメリカでは8:2の法則と言われている。これは、一つの組織で実績や売上等の結果をあげているのは全体の2割の者であるというような理論である。

考えてみると世の中はすべてこの程度の割合が当てはまるような気がする。私達の暮らす地球でも、海と陸の割合は7:3、吸っている空気も酸素とそれ以外の物質は2:8。私達の身体そのものも、水分とそれ以外の比率はそんなものである。

 京都大学に蟻の生態に関する面白い研究結果がある。蟻とキリギリスに物語のように、蟻というのは働き者の代表のように思われている。ところが、一生懸命働いているように見える蟻のうち、2割位がサボっている。

そこでサボっているケシカラン蟻だけで一つのグループを作ってみると、なんと8割が働き出し、働いている蟻だけを集めたグループには2割のサボり組が発生するという。

人間社会においても、そういう目で見てみると、うまく当てはまるようで興味をそそる。会社の中を覗いてみたら何人位が仕事をしているだろう。           

「あなたの会社では何人働いていますか」                
「そうですねえ。半分もいませんね」   

 これは環境の問題もある。今の部署ではうだつのあがらない人間が異動して別の仕事をさせてみたら素晴らしい成果をあげるという例は少なくないし、反対にやり手の人間が配置転換で消えていくこともある。

人間そのものも、いくら良い人だと思っても2割位の悪いところがあるし、どんな悪党にも2割位の良いところがある。いやなヤツでも、その2割の良いところを探して付き合えば気分の悪い思いをしなくて済む。

 正方形の中に円を書き、それぞれの面積を比較計算すると22:78になる。これこそが世の中の定めであって人間にはどうすることも出来ない原理である。2割というのは必要な遊びなのだ。重箱の隅をつつくような事をせず、丸く掬う程度に何事も対処すれば、波風が立たない。毎日の生活でも今日すべきことは何か考えると、色々用事があるようでも重要なものは2割程度で、あとはどうでも良い部類の用事であることが多い。そう考えれば世の中気楽なものである。なんでも7割から8割程度うまくいってれば良しとするとそんなにストレスは溜まらない。

講釈が長くなったが、この理論を応用して受講生に答える。

「一発合格は概ね8割である」

 学科の復習だけで時間を食ってしまった。あわてて海図とハンドコンパスの扱いを教える。海図の上で距離を測るという簡単なものだがディバイダーの持ち方だけが重要で海図上を移動するときに測定した角度が変化しないように注意しなけれはならない。

いよいよ実技に入る。         

「最初は、点検です。船体外部、機関、安全備品のどれかの点検が与えられます。一度やってみますのでよく見ておいて下さい」
 と言って、やってみせる。
 やってみせ、やらせてみせて、誉めてやらねば人は動かない。(山本五十六)では無く、勉強してくれない。                
「それでは、Aさん、機関の点検をして下さい」

と、女性を指名して驚いた。なんと襟元に長いボンボリのついた洋服に、手袋までしているではないか。乗船するに際しての基本からなっていない。
「それは、ちょっと。機械に巻き込まれたりしたら危ないですから、こっちのジャンパーを着ましょうか。それから手袋はやめておきましょうね」
 そう言って、自分のジャンパーを貸し与え、手袋を預かる。ひょっとしたら、とんでもない生徒を預かったのではなかろうか。

 点検は最初の試験項目である。試験官も人の子、はじめの印象が大切だ。点検で勉強不足を露呈し、頼りない印象を与えてしまうと後の試験項目で失敗した時、やっぱりダメかと簡単に減点される恐れがある。反対に、最初にしっかりした印象を与えておくと小さな失敗は大目に見てくれるかも知れない。ただし、あくまで「知れない」だけである。            
点検が済むと操縦席での説明。     

「ハンドルは右手だけで操作します。時計の1時の位置を握ります。ハンドルは左右それぞれ1回半しか回りません。左手は必ずスロットルレバーを握ったまま。背中は座席に付けて正しい姿勢をとりましょう。回転計、冷却水温度計、電流計等について質問されます。回転計は何を示していますか?」  

「エンジンの回転数です」       

「クランクシャフトの1分間の回転数と答えて下さい。それでは出港します。Bさん操縦席に座って下さい。ハンドルとスロットルを持って、ハイ発進して下さい」      

「いきなりですか」           

「いきなりです。前後左右の安全確認を忘れずに、さあ、張り切ってどうぞ!」

 私は助手席に座る。航行中は殆ど横と後ろを向いて、説明と操縦補助をする。おかげで私の操縦姿勢は普段でもハスに構える癖がついてしまった。

「前方の水銀灯に向かって微速で直進して下さい。増速して下さい。3000回転を超えないように。右、45度変針しなさい。右です、それは左! 右舷落水!」

と、やかましいエンジン音に負けないように怒鳴りっぱなしである。生徒も頑張って

「右舷落水、エンジン中立。右転舵。風下から救助に向かいます」

と大声をあげている。
 うんうん、いい調子だ。そう思っていると、急に艇は天満橋の下で止まった。

「先生、あれを見てください」

と、中年男性。橋の上を見るとミニスカートの女性が歩いている。コンパスは見えなくてもスカートの中は見えるらしい・・・これだけ厚かましい神経を持っていたら試験で上がることも無いだろう。

 発進、増速、変針、人命救助、蛇行、着岸、ロープワークとカリキュラムがある。午前中は人命救助まで。ところが、ここで大きな問題が発生した。機関の故障である。
 
 シフトケーブルが切れた。前進ギアが入らない。バックのまま、教習所桟橋まで戻る。今日の受講生の実技試験予定日は明後日。ボートの修理を待っての再講習は時間的余裕はなく無理だ。老師はどこへ行ったのか連絡がつかない。まずいことになったと途方にくれる。受講生達は             
「どないするんやろ。あかんかったら詐欺やな。」

等と言っている。法を知らない。詐欺と言うのは、人を欺いて財物を交付させることである。人の苦労を理解しないで勝手なことを言っている。しかし、受講生には関係ない。なんとかしなくては・・・。                                          
 他の船しかない。しかし、当時予備のボートは無かった。
電話作戦を始めた。知り合いの教習所に架けまくる。

「すみません。今からボートを貸してもらえませんか、実はカクカクシカジカで・・・」

 小さな個人教習所はどこも艇に余裕は無いし、ましてや力量も分からない者に、おいそれと貸してくれるところは無い。しかし、捨てる神あれば拾う神あり。地獄に仏。ついに色よい返事がもらえた。

 「どうぞ、用意しておきます」

 受講生をボートから車に乗せ代えて高速道路を飛ばして川から海へ行く。同じような型の艇とはいえ、クセも何も分からないボートに初めてのゲレンデ。危険箇所も深さも把握していない。慎重にやらなければ・・・事故を起こせば元も子もない。
 何としても今日の講習を成功させなければという一念と責任感だけで残りのカリキュラムを強引に推し進める。

ありがたいことに、蛇行練習用のブイがすでに打ってくれてあった。このブイを50メートル間隔に、まっすぐ並べて打つのが結構難しく、いい加減に打つと練習中に歪んできたり、ブイ同士の間隔が狂ったりする。新前の講師が講習しているのを見ると大抵ブイが曲がっている。その点年季の入った講師は、いとも簡単にブイを設置していく。ブイの並びを見ただけで講師の腕が分かるのだ。教室を選ぶ際、一度講習現場を見ればいい。ブイが曲がっているようなら他をあたろう。

「蛇行ブイが見えますか」       

「ハイ」               

「それでは第一ブイを左に見て蛇行しなさい」                 
「蛇行します。発進します。増速します。右から蛇行します」

 練習もこの辺までくると、ある程度自分でモノを言い、操船動作も応用が必要になってくる。うまく出来たと安心していると、いきなり旗のついたブイを放り込まれ    

「右舷落水」               

と来るから試験中は油断出来ない。

 なんとか合格できるであろうというレベルまでの操船訓練を終えた。自分の教習所に帰ってからロープワークをするころには、とっぷりと日が暮れて、私はといえば憔悴しきっていた。あと少しだ。

「憶えなくてはいけないのは、もやい結びに巻き結び、錨結びに一重繋ぎ。八の字結び、クリート結び等です。やってみますから良く見て真似をして下さい。こうやって、ああやってこうします。」

「手品みたいですな」        

「・・・。はい今日はこれでおしまい」

 大きな会社と違い、個人の零細企業は人も物も代わりが無い。しかし請け負った仕事は完全にやり遂げなければならない。信用が大事なのは大企業も零細企業も同じだ。今回のような事例では、うまくいったのが不思議と言える。

 それにしても、見るとやるとは大違い。傍で見ているだけだと、簡単に教えていて楽そうに見えたが、実際にやってみると、とんでもない重労働だった。

 講習も慣れるにつれて要領が分かり、のみこみの早い生徒の場合は、かなり楽になり、自信もついてきた。そんなある日、老師が病気で倒れた。幸い命に別状は無かったが、さすがに高齢でもあり、ついに

「もう、教習所閉めるわ」

と言って、突然教室をやめてしまった。当然私のインストラクター修行も終わりを告げ、海の男、いや川の男(カッパではない。念のため)としての生活に終止符がうたれた。

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