
レンタルヨット
4月 某日。 微風曇天。レンタル艇での初航海。何となく機関の扱いに不安を持ちながら出航した。理由は機関が前進に入らないこと。港内で方向転換するのに後進で真中まで出たのはいいが、前進に入らない。狭い港内をバックでうろうろしながら何回も試してみる。なにしろ初めて乗った艇だから様子が分からない。 「クラッチは少し固いですよ」 と言われたのを思い出した。固くはない。簡単に前進位置までレバーは行くのだ。しかし、プロペラが回らない。 「あのオッサン。エンジンの取扱もでけへんのかいな?」 というような顔をしているような気がした。いや、きっとそうに違いない。これが逆の立場だったら、そう思う。 とにかく何とか港から脱出したが、その後、不安は見事に的中することになるとは、神ならぬ身には分かるはずもなかった。 しばらく帆走を楽しんだが、まもなく風が落ち、艇は走らなくなってしまった。腹も減ったし食事にするかと思い、エンジンを掛ける。 ディーゼル機関はキュウーンガッコンガッコンと恐ろしげな音をたてて回りだした。さあ、前進。 ・・・・・入らない。どうしても入らない。おまけに今度は後進も入らない。いや、入るがペラが回らない。 前後進が入らなくなってしまった。何度もクラッチを入れなおしてみるが艇は進まない。あげくのはてには前進位置に入ったままで動かなくなってしまった。もちろんプロペラは廻っていない。その上、風も全く無くなり洋上を漂うハメになってしまった。運転不自由船(舵・機関の故障)である。 「アンカーはどこですか」 と聞くと,積んでいない。という返事。持っていきますかと言われたが、今日は試乗みたいなものだからいいかと考え、断ってしまった。やはり、装備品は常に万全を図らなければいけない。何が起こるか分からないのだ。小さな油断が大きな事故を呼ぶ。 仕方なく携帯でハーバーに連絡してボートで救出にきてもらうことにした。 少し前に、港内でウロウロしていたオッサンが、ボートで連れられて帰ってきたのを見た岸壁の人は、今度は何と思っただろう。犯人が捕まった時、ジャンパーで顔を隠す気持ちがなんとなく理解出来るのがくやしい。もう考えるのはやめにした。 原因はよく分からないが、シャフトがどうのとか、プロペラがどうのとか言っているが、私には分らない。クラッチの故障は2回経験があるが、いずれもワイアー切れが原因だったから、スロットルレバーの当りが軽くなっていて、すぐに原因がわかったのだが今回のようなケースは初めてである。カチャっと感じ良く前後進の位置まで行くくせにペラが回らない。後日判明したが、プロペラの取り付け部が外れて空回りしていたということだった。 あれこれ悩みながらも、とりあえず食事をとることにした。ところが、食事をしながら、艇降ろしの作業を見ていると、クレーンミスでクルーザーのマストがへし折られるのを現認。なんというかわいそうな・・・。しかし、この艇のオーナーは非常によく出来た人で、「私が作業を急がせたから」とか「けが人はありませんでしたか」等と、ハーバー側を気遣う素晴らしい人で、その後「今日は釣りだけだから、マストが無くても差し支えない。」と言って出航して行ったのだ。なんと心の大きい人だろう。見習たいものである。 もし、私の運が悪かったとしたら、エンジンが故障し、強風に吹き流
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