最新の航海技術をもってしても〜私には無いと断言しておくが。太平洋どころか日本海を横断することすら危険が伴う。だが、はるか昔。大陸や半島の人々は様々な理由を抱えて日本に渡ってきた。
恐らく彼らの船は、今のミニクルーザーよりその安全性は低かったに違いない。
朝鮮半島に百済、新羅、高句麗という国があったころ、百済王は戦いに敗れ、一族郎党を引き連れて日本海を渡り、九州、四国、和歌山から大阪に至る「南海道」を経て大阪へと落ちのびた。
彼らは、日本に大陸の高度な文化を伝え、畿内の人々から畏敬の念を持って迎えられて大阪各地に土地を与えられた。
その名残は今も多く残っており、大阪市東住吉区の百済という地名。(私が卒業したのは南百済小学校という。)
また彼ら一族の、広野氏や土師氏に与えられたのは、今の平野区であり、近鉄南大阪線沿線の土師ノ里駅付近だった。
後年、百済王は枚方の地に居を構えるが、この時、王の娘が奈良の都から鷹狩に来ていた皇子と出会い、二人はなさぬ仲になる。
この二人から生まれた子供が後に天皇となり
「我が母は朝鮮人なるぞ」
と大いに自慢したという。
当時、朝鮮文化はそれほどの影響を我が国に与えたのである。遣唐使が15回に対して、遣朝使は70回という記録がある。
朝鮮語で「私たちの国」と言うのを「ウニナラ」という。ここから奈良という地名が生まれた。「大和」も日本語では無い。これはどう読んでもダイワかオオカズであり、ヤマトというのは、福禄寿を祖とする朝鮮信仰の神が采配する場所という意味があった。スメラギ、スバルも同様で外来語である。
さて次に、新羅の国が攻められた時、追われた人々は、直接日本海を渡り、京都府の円山川付近に上陸し、神社を建立する。ご神体は「玉、鏡、剣」の三種の神器であり、これは今の世に引き継がれている。
しかし、彼らはさらに追手をかわす為に山中に分け入った。
彼らは、高度な製鉄技術を持っていたが、その技術を生かして、素晴らしい焼き物を作り出し、今に伝えた。これがシラギの人が伝えたシガラキ焼きである。
多くの知識や文化が、船に乗り、海を渡って日本にやってきた悠久の歴史。
ゆっくりと進むクルーザーのコクピットから、はるか水平線の向こうに思いを馳せている時、一隻のモーターボートが近づいてきた。
数人の男性がのっていて、全員同じ服を身に付けており、一種異様な雰囲気を漂わせている。
まさか、この大阪湾の、多くの人が休日を楽しんでいる海水浴場沖で北朝鮮の工作艇か。いや、まさかという言葉は通用しない。過去において日本国沿岸から拉致された事件は多い。
戦うにも機関銃も魚雷も無い。逃げよう、異国の地で生涯を終えたくない。「ゴーヘー!全速前進!」
その時、不審船から日本語が発せられた。
「停船しなさい。海上保安庁です。」
海上保安庁職員は紳士である。間違っても「そこのボロ船!止まれ!!」などという荒い言葉遣いはしない。しかし、停船しなかったら、高速艇はもちろん、航空機や大型船まで持ち出して数日間に渡る追跡を実施し、挙句の果てには実弾射撃に及ぶから命の惜しい者は逃げてはならない。オカの優しいパトカーとは違うのだ。
海上保安庁法第17条には海上保安官が法令により船舶に備え置くべき書類の提出を命じ積荷、航海に関する重要事項を確かめるため船舶の進行を停止させ、立入り、質問することが出来ると定められている。もとより遵法精神を持ち合わせている私は直ちに停船した。
何故だか知らないが、臨検に遭う機会が多い。それほど私、若しくは私の艇は怪しいのだろうか?
免許取得以来3回目を数える。たまの休日に、近場を散歩する程度にしては、3回という数字は多すぎる気がする。
ボートが横付けされて、お馴染みの虫取り網が差し出され、お決まりの言葉。
「免許証と、船舶検査手帳、証書を入れて下さい。」
言われたとおり、3点セットを網に入れると、次は不審尋問だ。どこから、どこへ行くのか、入港予定は何時か、救命設備を見せなさい。と型どおりの質問と安全指導がなされる。
不思議なことに、ヨットでもボートでも入港予定時間を聞かれる。
エンジン船ならともかく、ヨットでは風によってかなり予定時刻が変わる。もっとも、優秀なセーラーなら、ちゃんと計算して、概ね確かな時間を答えられるのかも知れないが、私の場合、計算はしない。する必要も無い。大抵が大阪湾内のお散歩である。ちょいと出て、すぐ帰る。
いいかげんな返事しか出来ない私に愛想をつかしたのか、保安庁は去っていった。
日本の海の防人。そう、私ごときを相手にしている暇は無い。一見、平和な時代であるものの、きな臭い事件が絶えることのない現代日本。特に海上においてはその傾向が強い。頑張ってもらいたい。
最後に、一つだけ重要な警告をする。ここで、私が述べた歴史に関する話は決して他言してはならない。特に歴史に詳しい人に喋ってはならない。きっとあなたは笑われ、今まで築きあげた信用をなくす結果となるだろうから・・・・
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