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今夜の番組チェック

 

雨     男

写真と本文とは関係ありません

 久しぶりに友人の所有する35フィートセーリングクルーザーに乗った。
寒い上に風も強い。バウからのスプレーがいっそう身体を冷やす。ドライスーツなどいった金のかかるものは無いのでジャンパーの上からカッパを着込み、首にはタオル、舵輪を握る手はかじかみ、歯はひっきりなしにガチガチと鳴る。

 そもそも、最初にボートやヨットに乗って遊ぼうと思った時、誰がこんな海を想像するだろう。普通は青い海に白い雲、輝く太陽。ついでに冷えたビールにビキニの女性といったような妄想を抱いて人は道を誤る。もちろん私は冒険家でも無ければ職業船員でも無いから、およそスポーツとは縁の無いマリンライフを思い描き、甲板でのんびり酒さえ呑めれば満足だったのだ。
 もっとも、気候の良い時に、他人の、若しくは営業用の船に客として乗船する時は責任が無いから多少荒れた方が面白いが、そういう時は大抵凪いでいる。

 自分がスキッパーやクルーとして乗ると、雨が降り、風が吹く。海の男では無く、雨男だと人は言う。
 先日、自分の小船で出港した時もそうだった。
 雨がパラついてきたので慌ててオーニングを張るが、人間、横着をしてはならない。
 屋根の固定用のロープを後で解きやすいように、いいかげんに結んで走っていると、いきなり突風が襲い、一瞬にして屋根はくしゃくしゃになって私の上に覆い被さり、折から一寸先も見えない程の激しい雨が降り出した。
 旋回窓どころかワイパーすら付いていないコクピットで全身びしょ濡れになりながら、二度と船なんかに乗るものかと思う。ただし、それは過去に何度も禁煙しようと思った回数とほぼ同じですぐに忘れ、また海に出る。

 海での遊びも幅が広がり、最近は海上または海岸での花火大会が増えた。当然私たち「海族」としては車や電車での混雑を避けてボート若しくはヨットで見物に行かなくてはならない。しかし、海上も混雑している。
 海上保安庁や水上警察の警備艇に追い払われ、狭い港内の一角に多くのボートやヨットが集められる。

 ヨットの高いマストの航海灯が左右に揺れて蛍の乱舞のように美しい。だが、そういう光景や花火を楽しめるのはパッセンジャーだけでスキッパーたるや周囲の船との安全確保に必死となる。

 うっかり夜空を仰ぎ見ているとすぐに前後左右の艇とゴツンゴツンとぶつかるので常にハンドルとスロットルを微妙に操作しなければならない。

 思うに小型船舶操縦士の免許試験の際に、波のある同一海面において舵と機関を用いて静止するという項目を追加してはどうかと思うが、そんなことを言うと今でも難しいと言ってる人から怒られるだろうか。

 グアムあたりでは水上バイクを借りる時の現地インストラクターは怪しげな日本語で
「アクセル進む。赤いボタン、エンジン止まる。ブレーキ・・・無 し。OK?」
これだけの説明で海技免状を持たない人も海に乗り出すのだ。


きゃびん